「藤吉 裕和の山の中から子ども達に向けて」


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「おっちゃん」と「山の中」をキーワードに、昆虫の家の紹介から設立のいきさつ、現在の活動をご紹介します。

作者紹介
藤吉 裕和
1973年4月26日、北海道常呂町産。地元の高校卒業後、家業の農業を後継しながら通信情報系フリーライターをする。その後、離農し網走のOA機器修理職を経て現在建設会社勤務。常呂町在住。

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■第34話

■春の香り

 4月になりました。うずたかく積み上がっていた雪解けもすすみ、柔らかな日差しが降り注ぐ日が多くなってきました。新しい服に身を包んだ子供達や新社会人が町を歩いている姿を見かけました。新しい環境で、精一杯頑張ってほしいなと思います。今回は、いつもよりちょっとだけ感じを変えていってみようと思います。

 「春のにおい」って感じたことがある方は多いと思います。体の感覚で、いろんな自然の変化を感じることができます。
 私にとっての春のにおいはたくさんあります。どれも、子供の頃から記憶の中にある「春のにおい」です。

 まずはビニールハウスの中のにおい。周りはまだ雪景色なのに、ビニールハウスの中は地面が出ていて、土の香りとビニールの香りと湿度が混ざった独特のにおい。このにおいがまずは春を告げる一番最初のにおいです。子供の頃、雪の中から一足早く顔を出した地面を歩きたくって、親がビニールハウスに入るときに一緒になって入って、大地を踏みしめたときの、あのにおいです。

ビニールハウスで感じる春

 雪が溶け始め、白い風景と黒の大地の競争が終わりを告げる頃、柔らかな春の日差しとともに大地の香りが。日当たりの良い場所にはフキノトウや福寿草が顔を出し始める時期。これは入学・進学の時期でもあります。小学校にあがったときの、持ち物のにおい、ランドセルのにおい。ビニール製品の独特のにおいや、真新しい服や靴のにおい。学校の行き帰りの通学路にある、道路排水の側溝に流れる水をせき止めてみたり、流してみたり。新しい草のにおいとともに家路についたあの頃。包み込むにおいとともに、春特有のあたたかい日差しの下で夢中になって遊んでいた・・・・。

福寿草の花で知る春

 これは、私の記憶の中の「春のにおい」です。読まれている方々は、それぞれが自分だけの「春のにおい」を持っていることと思います。
 「春のにおい」を思い出したとき、皆さんはどんな記憶がよみがえってきましたか?日々の忙しさに追われすぎたり、いろいろなことがあって思い出す暇がなかなかないのかもしれません。
 全員がそうだとは思いませんが、子供の頃記憶がよみがえってきませんか?
 自分の五感で感じたことは、大人になっても記憶の片隅に残っているようです。そして、子供の頃と同じ「におい」を感じて、ふっと懐かしい記憶とともに思い出す心の余裕がもてたら、柔らかな日差しのせいではなく、なんとなく、ほっとしませんか?
 子供の頃の記憶。大人になってから忘れている事が多いけれども、ふとしたきっかけでよみがえってくる記憶。楽しいことも、つらいこともいろいろと出てくるかもしれません。

 昆虫の家では、子供達に五感を使っていろいろと体験してもらいたいという思いのもと、いろいろな事業を展開しています。もちろん、ボランティアで事業にあたる多くのスタッフも、それぞれの思いを胸に、自分たちも楽しみながら子供達と一緒に、数多くの自然体験に臨みます。
 子供達にとって、昆虫の家のにおい、雰囲気、スタッフ達、ふっとした事で思い出してもらえるような体験になればうれしいな、と思います。
 
 今年も、また春がやってきました。皆さんの「春のにおい」は思い出しましたか?いつしか、記憶の中の「におい」は「香り」に変わり、あなたにとって心地よいものになるはずです。

(続)

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