「藤吉 裕和の山の中から子ども達に向けて」


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「おっちゃん」と「山の中」をキーワードに、昆虫の家の紹介から設立のいきさつ、現在の活動をご紹介します。

作者紹介
藤吉 裕和
1973年4月26日、北海道常呂町産。地元の高校卒業後、家業の農業を後継しながら通信情報系フリーライターをする。その後、離農し網走のOA機器修理職を経て現在建設会社勤務。常呂町在住。

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■第31話

■子供達による提案は・・・

 もうすぐ2月です。オホーツク海には、はぐれた冬の使者が見えるようになってきました。この使者達は気まぐれで、一夜にして大勢押し寄せたり、海面から姿を消して濃いブルーのオホーツク海を見せてくれたりします。この使者、流氷が濃い青を白く塗り替えた時、しばれもピークに達します。

 今回も、昨年の「いきいき」について記したいと思います。実に、色々な個性を持った子供達が全国/韓国より参加したという事は今まで記したとおりです。さて、今回は「いきいき」始まって以来の出来事を紹介したいと思っています。

 いつもの「いきいき」は、おっちゃん達が1年も前から計画して、講師の先生方の都合を調整して、綿密な準備を行った上でプログラムが決定しています。そして、ほとんど空き時間というものは設定されていません。よって、計画にないプログラムを入れる事は事実上不可能に近い面はあります。天候などによってプログラムができない時は、臨機応変にプログラムの入れ替えを行いますけれども、新規でプログラムを組み込む事は容易ではありません。
 子供達は毎日、各班の班長とチーフカウンセラーの計5名だけで会議を行っています。これは「班長会議」と呼ばれます。各班付きのカウンセラーにもなかなか話せない事や、班を越えた問題が発生した時など、子供達の率直な意見や思いをチーフカウンセラーが汲み取る意味もありますし、翌日のプログラムについての簡単な説明や徹底事項なども伝達される時があります。
 今年は、この班長会議で「自分達で何かできるものをやりたい」という声が上がったようです。今年参加していた子は将来サッカー選手を目指している子が多く、「サッカーをしたい」という事になったようです。チーフカウンセラーは、「みんながいいよ、と言ったら検討しましょう」という話をしたようで、班長達はプログラムの空き時間を見つけてはみんなに声をかけていました。おおむね、みんなでやりましょう!という話になった頃、チーフカウンセラーと班長代表を通じて事務局長の方に「サッカー大会をやりたい」という話が上がってきました。子供達は、プログラムと首っ引きになりながら「このプログラムの終わった後の時間ならできる」という時間も把握して提案をしてきました。事務局長は意外とあっさり「いいぞ」という返事を返してました。
 普通の「型」にはまりきったプログラムでは、このような事はなかなか許されないのかもしれませんが、意外とあっさりと許可が出たのです。

昆虫カップ2004開会式

翌日からは、班長会議は「女の子も、カウンセラーも、小さな子でも、みんなで参加できる特別なルール作り」になりました。もちろん、いろいろな問題などについて話し合いをした後、サッカー大会に向けてのルール作りを行っていたのです。そして、このサッカー大会の名前は「昆虫カップ2004」となりました。
 ルール作りは簡単なようで困難を極めていたようです。こちらも子供達が主体となって話し合いをしていました(チーフカウンセラーはあまりサッカーのルールを知らないせいもあったようですが・・・)。大会ルールができたのが、確か昆虫カップ開催の直前だったと思います。普通のルールに加えて10個以上のルールが加わりました。
 こうして、「いきいき」初の子供達が考えて、子供達が話し合って、そして実現したプログラムが開催となったのです。

子供達が毎日考えた特別ルール

子供達同士の真剣なプレー、周りから響く声援と歓声。男子カウンセラーは攻撃を禁止されているため必死に守る、女子カウンセラーを思いやる子供達などなど、おっちゃん達も目を細めて見ていました。
 「いきいき」に何度も参加している子供達がいたから、「いきいき」の流れを把握して、提案ができたという面もあるのかもしれませんが、北海道まで来て、新たな仲間とともに「何か」を自分達の手でやってみたい、という思い。それに答えるスタッフ達。なかなかいいな、と思って見ていました。
 こんな子供達は大きくなった時も、自分達の考え得る事を与えられた環境で、精一杯取り組む事ができるのではないか−−−そんなふうに感じました。なにより、大人でも難しい(大人だから難しい?)このような自主性は、どんどんと伸ばしっていってほしいなと思っています。「いきいき」のおっちゃん達が与えるプログラムがたくさんあるからこそ、こんな1つの子供達の自主プログラムもあっていいかな、あって良かったなと思っています(全部が子供達の自主的なプログラムだけでもダメだと思います。大人になって、自主性を殺さなければならない場合は多々あります。自分がやりたくないプログラムでも、嫌でも、それに取り組むという事は絶対に必要な事だと思います)。

白熱したプレーに歓声が上がる

今年の夏の「いきいき」には、いったいどんな子供達が集ってくるのだろう・・・。そんなちょっぴりとした期待をもって、すぐにやってくる夏に思いを馳せるのでした。

(続)

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