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作者紹介
みやび
生まれも育ちも北海道の、チャキチャキの道産子。
「雪が積もれば歩くスキー、雪が溶けたらフライフィッシング」といった具合に一年中遊び呆けている困り者ですが、これらの遊びを通じて「自然の素晴らしさ、大切さ」を学ばせて貰っている気がします。
近頃はコンサドーレ札幌の試合観戦にハマり、休む暇なく遊んでいる三十路男です。

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■第7話

 尻別川本流、ニセコ町付近の流れに腿上まで水の中に立ち込んで竿を振っていると、すぐ足元を大きな魚影が上流に向かって泳いでいくのを発見しました。
 所々白い斑が入った大きな魚体。すぐ近くに人がいるのも意に介さずに悠然と、貫禄たっぷりの泳ぎ方。その大きな魚の正体は鮭でした。


 元々、尻別川には発電用の取水堰堤が中流域に複数構築されていて各所で流れは分断。堰堤により魚の遡上・移動が阻止されてしまっていた川に、流域住民団体の働きかけで本流の全堰堤に魚道が設置されたのは、ほんの数年前の事です。
 設置された魚道は、どうやらその役割を果たしているようで、堰堤を越えて泳ぐ鮭の姿を目撃出来た事は微かな喜びでした。

 しかし、魚道によって魚の遡上が可能になったとは言えども、尻別川上流部で鮭の孵化・放流事業が行われているわけではないので、ニセコまで遡上して来る鮭は極わずか。
 尻別川に遡上する鮭のほとんどが蘭越町付近で合流する支流に遡上してしまう現実を考えると、私が目撃した鮭は蘭越からニセコまでずっと孤独な一人旅を続けてきた「迷い鮭」なのかも知れません。

 大海を旅し、その生命の終に遥々ニセコまで辿り着いた強者ではありますが、この鮭が無事に産卵に適した場所を見つけ、自分の子孫を残す為のパートナーと出会う確率は、きっと高くはないのでしょう。
 願わくば、彼の長い旅の目的が成就され、そして、海と川と森とを繋ぐ彼等の役割が果たされん事を。

(続)

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