大谷地恋太郎の地方記者日記

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作者紹介
ペンネーム:大谷地恋太郎
日本各地を転々とする覆面記者。
取材中に遭遇した出来事や感じた事を時に優しく、時に厳しくご紹介します。

(以下は大谷地氏とは関係ありません)

岡本 康太郎(1874-1954)
現在の和歌山県生まれ。1894年(明治27)叔父の店の整理の為に函館に渡り、函館店の経営を任される。1907年1(明治40)に店名を岡本漁網店と改め、1911年(明治44)には函館製網合資会社を設立。社長として経営を拡大し北海道を代表する漁網販売会社とする。1917年(大正6)函館区会議員に当選、以後も函館商工業界のリーダーとして地場産業の発展向上に大きく貢献した。

■地方記者日記130
 地震
by大谷地恋太郎

 参院選に高校野球が重なるのは、三年に一回だ。この時期、地方の支局はやたら忙しい。選挙に人手を取られる一方で、高校野球も紙面で扱うから、人数が足りない。
 選挙は各候補者の陣営周り、関係者への取材、そして情勢を読み取り、開票日の当日、いかに早く「当確」を打つのかを考える。事前に情報を分析し的確に「当確」を打たないと、それだけ紙面づくりが十分でなくなる。ある程度のレベルの記者を投入しないと、いい記事は出来ないし、いい紙面は作れない。
 一方で高校野球は、試合を全部見て、試合後には監督や選手にインタビューして記事を書くわけだから、ある程度の人数の記者が必要だ。
 そんな忙しい中で起きたのが、新潟県・中越沖地震だった。
 柏崎市を中心に、上越地方や中越地方を襲った今回の地震は、三年近く前の中越地震を思い出させた。あの時は、秋の季節で、これから冬に向かう寒さの中での取材が続いた。東京本社だけではなく、地方支局の記者も相当数、応援に行った。
 今回も、かなりの記者を現地に送ったが、何しろ、ただでさえ忙しい時期に重なったため、トンデモナイ日々を記者たちは送っている。
 高校野球は延期を決めたが、参院選はそうはいかない。選挙専従以外の記者を、自陣の取材に当たらせて、当分はしのぐしかないのだ。
 地震発生翌日の各紙の紙面を見て、私もちょっとうなってしまった。
 崖が崩れて、鉄道や道路が埋まっているのだが、実はその道路も鉄道も、ちょっと前、私が勤務していた時によく利用した所だったのだ。たまたま転勤で、その地を離れたが、その時にこんな地震が発生していたら、私の生命はなかったかもしれないのだ。まさに身近な災害であることを、身にしみて分かるようだった。
 新潟地方は、夏になると、極端に暑くなる。北海道では信じられないだろうが、夏になると猛暑になり、最高気温が38度を超す日々が十日も続くことがある。支局のエアコンが壊れたり、駐車させていた車の中が高温になっていたり、日なたを歩くだけで目眩がしたり、大変住みにくい土地柄だ。今回の地震被災者はこれから大変だろうと推測する。
 にしても、最近は地震の発生が、やたら多い。
 私が札幌に勤務していた時も、十勝沖地震があった。あの時は明け方前の早い時間帯で、ウトウト寝ていたら、地震の大きな揺れで飛び起きた。住んでいた八階建てのマンションがグラグラ揺れて、「やばい」と思ったものだ。こういう時、意外と動けない。身体が硬直してしまい、逃げ出すということも、しがみつく、ということも考えることが出来なくなる。
 もっと前の話だと、阪神大震災があった。あの時は一カ月も現地に行っていたが、宿泊するホテルもなく、窓が壊れて風が中に入ってくる会社の支局のビルの中で、新聞紙を敷いて寝た記憶がある。食料も水も足らず、応援取材に入った私たちもが、難民生活をしていたようだった。町中がメラメラと燃え続けていて、粉塵が舞っていた。壊れたビルの谷間を歩いて取材した記憶がある。地震は町を崩壊させる、恐ろしいエネルギーを持っていると実感したものだ。
 取材の経験則で言うと、軍手と厚手の靴下は必需品だ。タオルも数本取材バッグに入れた方がいい。そしてアルコール性の「水なしで洗えるシャンプー」や濡れティッシュも何個か用意しておく。パンツやシャツなども着替えを持ち歩いていくことも大切だ。女性なら生理用品も必需品だろう。携帯電話もバッテリーが切れることを想定して、予備のバッテリーを持ったり、充電できる乾電池式の充電器を持ちたい。公衆電話をかけることも想定して、小銭も持ち歩きたい。靴は登山靴などが安全だ。
 取材ノートも多めに持ち歩くこと。
 意外に想定外のことだが、大都会の災害ほど、トイレに困ることが多い。水洗トイレが止まってしまい、排便ができる場所がなくなる。そうしたトイレ探しも問題になる。だから、トイレがあり、排便が出来る場所を確保しておくことも大切だ。
 ちょっと話が汚くなりました。

(続き)



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