大谷地恋太郎の地方記者日記

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作者紹介
ペンネーム:大谷地恋太郎
日本各地を転々とする覆面記者。
取材中に遭遇した出来事や感じた事を時に優しく、時に厳しくご紹介します。

(以下は大谷地氏とは関係ありません)

若松忠次郎(1839-1919)
青森県大畑村生まれ。1850(嘉永3)、
松前に渡った父を追って渡道、2年後に広尾に移住。十勝場所支配人として十勝組合を結成、広尾の産業発展に貢献した。また1880年(明治13)の組合解散後も十勝の要職を一手に引き受け公共事業の発展に尽力した。

■地方記者日記120
 定食屋
by大谷地恋太郎

 市役所の近くに、「定食屋」と名乗る飲食店がオープンした。肉料理や魚料理、卵料理など、いろいろな総菜を皿に一品ずつ持って、客に選択させて売る店だ。最後はご飯と味噌汁などを頼んで、カネを支払うシステムだ。あとはテーブルの空いている所に座って食うだけだ。
 この店の出現で、僕はよくこの店を利用するようになった。自分で皿を取って、支払えば、すぐに食べることが出来るから、時間がない時は便利だ。一般の店が注文してから料理が来るまで、ある程度の時間がかかるが、この店だったら、店には行って食べ始めるまで、数分しかかからない。時間が惜しいサラリーマンにとっては、うれしい店のオープンだった。
 しかし、意外に料金が高いのと、味はいま一つだ。
 焼き魚が二百十円。野菜炒めが二百十円。小鉢のシラスおろしと、ひじきの煮付けがそれぞれ百五円。これにご飯と味噌汁を付けると、九百円から千円がかかる。
 しかも、作り置きをしているのだろう。みんな冷たくなっていて、客が自分で電子レンジに入れて、温める仕組みになっている。
 先日は煮魚を温めたら、煮汁が蒸発して飛んでしまい、味気もない総菜になってしまった。
 周囲を見ていると、揚げ物ばかりを総菜にしている中年男性が意外に多い。健康に悪いなあ、と思いつつ、見ていた。この地方は、揚げ物文化があるようで、みんな揚げ物ばかり食っている。天ぷらに魚のフライ、揚げちくわ、揚げシュウマイ。やれやれ。
 客の回転は速いし、そして人件費がかからない。セルフサービスだから、社員食堂みたいな雰囲気だ。
 しかも女性は少ない。女の人って、食事をしながら、長々とおしゃべりをするのが得意な動物だから、こうした、すぐ出て、すぐ食べ終えるというのは、生理的に合わないのだろう。店にとっても、長々いる客って、時間に比較して単価が安くなるから、ちょうどいい気がする。
 それにしても、こういう形態の店は少ない。地方にいると、あるようでいてないのが、こうした定食屋だ。定食屋というと、「夫婦二人で経営して、地元で人気の店」なんてイメージがあるが、この店はチェーン店のようだ。
 チェーン店でもいい。僕が今勤めている支局の周辺にはこうした店が全くない。コンビニの弁当ばかりで飽きている僕にとってちょうどいい店となった。揚げ物を避けたい人間にとって、こうした店はいい。
 市の職員や周辺の民間会社の人たちはどうやって昼食を摂っているのか、気になって、何人もの人に聞いてみたことがある。
 札幌時代には想像できない昼休みを取っていて驚いたものだ。
 何と、マイカーで自宅に一度帰って、自宅で食べている、というのだ。田舎だから出来ることなのだろう。一度出勤したら、戦いが始まるのがサラリーマン、という気持ちを持っている者にとって、昼休みに帰るのは想像できるものではない。とても職場に緊張感を維持できない。
 こうした人が多ければ、地方で定食屋などオープンしても、はやりはしないだろう。最初は興味本位で行くとしても、リピーターとなっていくことは考えにくい。地方では定食屋は育たないのだろう。そんな気がする。
 そういえば、昨年夏にオープンした高級回転寿司店も、最近は人の出入りが少なくなっている。珍しいから最初は人が集まるだけで、長くは続かないのだ。

(続き)



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