大谷地恋太郎の地方記者日記

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作者紹介
ペンネーム:大谷地恋太郎
日本各地を転々とする覆面記者。
取材中に遭遇した出来事や感じた事を時に優しく、時に厳しくご紹介します。

(以下は大谷地氏とは関係ありません)

恩賀徳之助(1877-1963)
和歌山県生まれ。東京法学院を2年で中退し1902年(明治35)渡道。函館にて呉服商を営む。1917年(大正6)に函館区会議員に初当選。以降、道会議員、函館市会議員、初代函館市会議長、衆議院議員など数多くの役職に就き政界、財界に影響を与え、なおかつ街の発展にも大きく貢献した。

■地方記者日記118
 統一地方選
by大谷地恋太郎

 四年に一度の統一地方選ほど、新聞社、新聞記者にとって厄介な仕事はない。知事選、市長選、市議選、町長選、町議選、村長選、村議選が一度にやってくるのだから、異様な状態で仕事が続く。
 これがテレビ局だと知事選や市長選を報じるぐらいで、田舎の村長選などには見向きもしないだろうが、新聞社は違う。立候補する予定の人間の名前、職業、過去の履歴、生年月日、推薦政党、住所、選挙事務所の住所などを事前に調査して、どの程度の規模の選挙になるか、事前に相当な量を調べるのだ。
 たかが村議選と侮ってはいけない。定数が二十ある議会だったら、その候補予定者を割り出して、今述べた個所を調べていくのだ。
 地方に駐在していると、この作業か大変だ。支局から車で二時間もかかる村の選挙だったら、その候補者の数だけ割り出して、一人一人から聞き出していくから、何日も何日も往復し作業がかかるのだ。運転でくたくたになる上に、空振りすることが多く、作業が空転する。
 今回はその作業を昨年十一月から始めたが、選挙まで半年あるから、という理由で、取材を拒否する人間が多かった。立候補への態度が決まっていないから、と言われるのだが、それは他の候補が立候補するかしないか、模様眺めをしているからだ。
 取材する側からすれば、こんな人間を相手に、取材をするのだから、異様な労力が必要とされる。
 ある村では定数十四に対して、現職の六人が引退した。するとこの六人分、新人候補が出る計算だが、なかなかその情報が入ってこない。
 選挙説明会にも出なかった候補者が、突然告示日に立候補することもあるし、事前審査会すら出なかった人物がいきなり出馬することだってありうる。
 また定数と同じ数の人間が立候補を予定していることが事前で分かったとしても、当日になって立候補する人間がいて、無投票当選がなくなってしまうケースも多い。
 このように持ち場の市町村数が多い地方記者にとって、統一地方選はまさに茨の道といっていい。
 そこで前回ぐらいから、東京に本社を置く新聞社五社が話し合って、互いに協力することになった。
 事前に候補者の情報を記すペーパーを、新聞社は「調査票」と呼んでいるが、この調査票を各候補予定者に書いてもらう作業を、分担することになった。
 作業の軽減だ。
 A社はB村の議員を、C社はD町の議員を、E社はF市の議員の調査票を集めることになった。
 しかし、これがとんだ落とし穴だった。
 そう、一部の社がさぼってしまい、候補予定者すべてを網羅することなく、調査票を集めてしまったのだ。
 新聞社は集めた調査票を元に、事前にコンピューターにデータを入力し、告示日に備える。
 これで完璧だと思ったのがいけなかった。他社の取材能力と出来映えを信じ込んでいた。
 そう告示日の夕方になって、飛び込み候補者が何人も出てきて、そのたびに取材に面会を申し込んだのだが、何と全員が現職の議員だったのだ。
 ここの議員を担当した社の人間が、候補予定者を完全に把握していなかったのだ。
 大失態になるところだった。
 ライバル同士の新聞社が、協力することは無理なのかも。

(続き)



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