■地方記者日記116
ヤクザ |
| by大谷地恋太郎 |
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土曜日のこと。
たまにはイタリア料理でも食おうと思って、駅前通りに面したビルの二階にある洋食屋に入った。初めての店で、ランチにピザやパスタ、ハンバーグ、ビーフシチューなどを用意している、という電光掲示板まであって、一度は行ってみようと考えていた。
二階への階段を上がって、店に入った。
正午前で、だれもいない。
店の窓に近いテーブル席に座った。
たまにはピザでも食べようと思って、注文した。
やや高齢の女性がウエートレスをしていた。
たぶん老夫婦で経営している個人の店なのだろう。
店内はやや静かな音楽が流されており、くつろぐことが出来る店なのか、と思ったりもした。
僕が入店して五分ほどたった時だった。
中高年のグループ三人が入ってきた。みんな男だ。
入るなり、「ビーフシチュー、ライスで」などと注文している。
ジーパンを履いている者もいて、年齢は三人とも六十歳以上の高齢者だ。僕とはテーブルを一つ挟んで、店の真ん中のテーブルを陣取った。
最初は、趣味のグループか老人会のグループかな、と思っていた。
そういう客が常連客として来たのだろうと、と簡単に考えていた。
やがて、僕の注文したピザとサラダ、ウーロン茶が来た。
さあ、食うぞと言い聞かせて、一切れずつ食い始めた。
そんな時だった。男たちの話す声が断片的に耳に入ってきた。
保険金。
放火。
サツ。
留置。
拘留。
自白。
弁護士先生。
エッと思った。
サツとは警察のことだ。
この単語で連想できるのは、彼らが警察官か、それに近い関係者。またはその反対で犯罪関係者。これしか考えられない。
僕は新聞記者としてこうした単語をよく業界用語として使うから、使う人間や世界は限られてくるのだ。
ちょっと驚きながら、ピザを食い続けた。
こんな会話も聞こえた。
あいつは放火で保険金をもうけたけど、警察には自白しなかったから一年間も拘留された、と。
これは警察官や警察関係者の会話ではない。そう感じた。
そう、残るのはその正反対の業界、暴力団関係者だ。ヤクザだろうと思った。
やばいかな。
変に声をかけられないよう、ピザを食い続けた。どろどろに溶けたチーズをフォークですくい上げ、手でつかんで食った。手も汚れてきた。ティッシュペーパーで何回も拭いた。
変な店に入ってしまったなあ。土曜日の昼休みに、ヤクザなんか入れるなよ、と思った。
そんな時だった。
携帯電話でしゃべり続けている女が入ってきた。
入店と同時に、その男三人が直立して、「おはようございます」と挨拶をするのだ。
挨拶からして、この女が、三人にとっては上のレベルであることが分かる。
そう、あねご、姉御、ねーさんなのだろう。
ぎょっとした。
早く食い終えないと。
早く店を出ないと。
そう思ってようやく食べ終えた。
カネを支払って、店を出た。
もうこんな店来ないぞ、と思った。
田舎の町は、こうした輩が堂々と店に入ってくる。
住みづらい街だ。
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(続き)
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