クルセイダーの「北海道HOBBY BOX」


バックナンバー



作者紹介
クルセイダー
1974年生まれ。生まれも育ちも札幌。釣り人の定説通り(?)小学生の時、フナを釣ったのが釣り人生の始まり。
 2002年より本格的にルアー釣りを始め、現在に至る。

 

■第10話 「熱風を切り裂いて」

 

7月中旬の暑い日の午後、どこまでも続く十勝独特の直線道路でアクセルを踏み続けた。
普段は単独釣行が多い私だが、春に中学からの釣り友達が本州から帰ってきてから二人で釣りに行くことが増えた。
車中では懐かしい友人の話や、釣りの話が絶えることがない。知り合った当時は、自転車で色々なところへ釣りへ行った。
今では車という移動手段を得て、移動できる範囲もグッと広がった。この友達とまさか十勝に釣りに来ることができるなんて・・・。
予定より早く目的地に着くことができた。釣りバカの二人だから「日が暮れるまでやってみるべ。」と偵察を始める。
ところが反応が全くない。渇水と高い気温の影響か?二人して首を傾げるばかり・・・。
初めての長距離遠征の友人はきっと不安だったに違いない。私も正直「まずい。」と思った。
日が暮れてから川の変更を提案して一時間ほど北へ向かった。
街灯も何も無い真っ暗な夜をあまり経験したことのない友人は少し怖がっていたが、川の流れを聞きながら眠りについた。

朝三時。二人は目覚ましもないのに勝手に目を覚ます。本当に釣りバカだ。
川へ下りるといきなりライズがあった。魚がいるであろうポイントを通過するように、シュガーミノー5センチ赤金をアップクロス気味にキャストした。
すぐに手元にゴンというアタリが伝わってきた。「ほらきた。」ロッドを軽く立てて魚を暴れさせないように取り込む。
そのポイントには他の魚の雰囲気もあったからだ。第一投目で31センチのニジマス。友人にポイントを譲る。するとすぐにヒット。
まだ薄暗いので、緩い流れに溜まっているようだ。どんなミノーを流してもニジマスが勢いよく飛び出してくる。
陽が高くなっても反応がよいので少し驚いたが、友人は満足している様子。一時間しないうちに二桁を越えた。

十勝の川は流れが速いところが多く、尾びれが立派で体高のあるニジマスが多い。夕方、もっと流れの速い川へ移動した。
天気が良かっただけに先行者が四人はいるようだ。少し場所をずらしてみたものの相当プレッシャーがかかっているに違いない。
ポイントへ近づきすぎないように気を付けながらダウンで進むと、ボサが続く緩めの瀬が見えてきた。
下流へ流せるだけミノーを流してゆっくりとリトリーブをする。途中少しえぐれたポイントに差し掛かった時に突然「ゴン!」ときた。
なかなか流れの中から出てこない。一瞬姿が見えたが、サイズの割に引きが強い。少々強引に取り込んで魚体を見て納得。
ヒレピンのニジマスだ。明らかに他の川よりも尾びれが大きい。
しばらくして友人を先行させるために休憩をした。「そろそろ終了時間だな。」と考えながら歩いていると友人の様子が少し変だ。ロッドもグニャリと曲がっている。
「デカイのか?」叫びながら近づくと木陰の早瀬の中にギラリと光った。下流や左岸側に走られたら終わりだ。右への移動を妨げている木の枝を引っ張りながら、
「こっちだ。」と誘導した。ラインブレイクを気にしてか、ついつい友人はロッドを寝せてしまう。しかも一番魚に行ってほしくない左へ・・・。
「こっち。こっち。」と枝を押さえながら声をかける。そしてなんとか浅瀬へ魚を誘導することができた。33センチのニジマス。
あまりの体高に40センチクラスと見間違うほどの立派な魚体だ。なんだか釣り番組みたいなエンディングだった。がっちり友人と握手したのは言うまでもない。

(続)

| 会員規約 | 免責と注意事項 | 著作権とリンク | 広告募集 | お問合せフォーム | ホームページ製作|
Copyright(C) 2002 Hokkaido-club.com All rights reserved.