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撮影者紹介

ぱぴるす

1967年生まれ。北海道大学馬術部OB。平成2年福岡国体総合馬術7位入賞。人と馬のコミュニケーションをテーマに乗馬を続け、今日に至る。最近は馬の長距離騎乗競技(エンデュランス)にも出場、全日本大会(鹿追町)で100kmを完走している。
自宅は札幌にあるが、現在仕事の都合で熊本県在住。北海道で自分の牧場を持つという夢に向かって、現在着々と準備中。


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○Seat11

 今は厩舎が移転したので余り見かけなくなったかもしれないが、私が学生時代、つまり厩舎がまだ北18条にあった頃は、早朝に北大構内を馬に乗って歩く部員たちに会ったことがある人も少なくないと思う。
馬場以外のところで馬に乗ることを「外乗(がいじょう)」と言う。
北大の広大なキャンパスの中を馬に乗って歩くのは、一見とても優雅に見えるかもしれないが、実は外乗も調教のひとつなのだ。
馬は環境の変化に敏感な動物で、行ったことがないところへいきなり連れていくとひどく興奮し、時には手に負えないこともある。
そのため、普段から馬場の外の世界を馬に見せ、競技会などで初めて見るような場所に行っても動じないように調教をする必要がある。
これを馴致(じゅんち)と言うのだが、外乗はこの馴致のために行っているのだ。
競馬などで、初めて走る競馬場に行ったときなどは、スクーリングと言ってレースの前日などに実際にコースに入り周囲の環境に慣れさせる作業を行うが、これも馴致である。

外乗で騎乗するのはもっぱら下級生の役割だった。上級生は外乗の途中でわざと普段と違う環境を作り、それを馬に見せて馴致をしていた。
ただ、そういった馴致をするときに馬に乗っていると、興奮したときの馬の仕草、馬のとっさの動きを体で覚えることができる。
初めて見るものの前で止まって固まってしまう馬もいれば、横っ飛びしたり、はたまた期待を裏切ってまったく興味を示さず平穏無事に通り過ぎたりする馬もいる。
驚きに対して人の反応がさまざまあるように、馬も馬ごとに反応が違うから面白い。また、その反応の違いがわかると、その馬のことを理解できるようになるのだ。

馴致を繰り返していくと、馬は少々の環境の変化でも動じなくなってくる。
そうなってくると、野山を走る事だって可能になる。
最近はホーストレッキングが各地で盛んだが、トレッキングに使われる馬は十分に馴致がなされている馬であり、初心者が乗っても環境の変化に動じることがないように調教されている。
それゆえに誰が乗っても気持ちよくアウトドアの世界を馬の上から楽しむことが出来る。
草原を走るもよし、波打ち際を暴れん坊将軍のイメージで走るもよし。
季節的には夏がいいのだが、一方で今の季節、白い雪原の中を馬に乗って走るのもまた格別だ。
学生時代、いつかは挿絵のような世界を馬に乗って体験してみたい…そんな夢を抱きながら外乗に行ったのを今でも覚えている。

蹄の音seat11イメージ
image by hiromi

 

(続)

 

 

 



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