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撮影者紹介

ぱぴるす

1967年生まれ。北海道大学馬術部OB。平成2年福岡国体総合馬術7位入賞。人と馬のコミュニケーションをテーマに乗馬を続け、今日に至る。最近は馬の長距離騎乗競技(エンデュランス)にも出場、全日本大会(鹿追町)で100kmを完走している。
自宅は札幌にあるが、現在仕事の都合で熊本県在住。北海道で自分の牧場を持つという夢に向かって、現在着々と準備中。


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○Seat5

 大学に入って初めて乗った馬は北銀(しろがね)という馬だった。体高の高い馬で、その背に跨って見下ろしたときの感覚は、今でも忘れることが出来ない。
 最初の騎乗は10分程度だったが、とにかく馬の上から視界に入ってくるいつもと違う感覚が忘れられなくて、もう1回乗りたいという感覚だけが残った。
 馬の歩様は、遅い順に「常歩(なみあし)」「速歩(はやあし)」「駆歩(かけあし)」「襲歩(しゅうほ)」の4種類に分けられる。
 常歩(walk)は馬に乗ってポックラポックラと歩く歩様でリズムは4拍子。速歩(trot)はトントンという2拍子の歩様で、競馬を良くご存知の方は「ダグ」という言葉がそれにあたる。
 駆歩はタカタッタカタッの3拍子でキャンター(canter)といわれる。乗馬の世界ではこれが最も早い歩様になる。襲歩はギャロップ(gallop)といわれ、競走馬がレースをするときの歩様で、リズムは4拍子。サラブレッドなどは時速60kmまで出る。4本の肢がすべて空中に浮く瞬間がある歩様だが、普通の乗馬ではそこまで出すことがない。私も1度か2度ほどしか襲歩の経験は無い。
 馬の歩様の名前なんて聞き慣れないなと思いきや、案外我々の日常社会にも結構浸透しているもんだと感じる。canterはどこかの会社のトラックの名前にあるし、gallopは競馬専門誌の名前にある。
 初心者は常歩のリズムに慣れることから始める。直径10〜15mの円周上を歩く馬のハミの部分にロープを引っ掛け、先輩が円の中央に立ってそのロープを持って、馬に指示を与えて動かす。これを「調馬策(ちょうばさく)運動」と言うが、馬をうごかすことができない初心者はこの調馬策運動からはいる。
 常歩になんて簡単…と思っていたら大間違い。とにかく馬の上は不安定だ。鐙に肢がかかっているとは言え、馬の背中の動きについていくことは容易ではない。馬の動きを予測することが出来ず、更に馬の上ということで緊張が伴うから、不意の動きについていけないのだ。
 馬に乗り始めてしばらくは馬上体操というもので体をほぐす訓練が続いた。馬の上で前後左右に体をひねったり、腕を回したり。馬の上で何でも出来るようになるための訓練だが、その中で私が一番好きだったのは馬の上で仰向けになる運動だ。馬の上で人間が後ろに仰向けに倒れ、頭を馬のお尻につけるのだが、仰向けになったときに見える空と、馬の反撞(はんどう)がとても心地よい。馬の上で背伸びをする感覚が何ともいえないのだ。
 馬に乗り始めて2週間後、いよいよ自分の意思を馬に伝える瞬間がやってきた。

(続)



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