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作者紹介
衛藤 聡
1961年登別市生まれ。登別市在住
趣味:北海道らしく美しい風景を求めて最近はもっぱら山に登る。(半分は運動不足解消のためかな?)
仕事:これまた北海道らしい建築を求めて、日々建築設計活動中。


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衛藤聡建築事務所
http://www7.plala.or.jp/etaa/


 ■第12話 「フェリー」

 ガラス越しに3隻のフェリーが見えた。
まもなく1隻が静かに岸壁を離れていった。
もっと間近で見ようと外へ出た。
オレンジ色のナトリウムランプの中、
船に乗降するトラックがひっきりなしに行き来している。
そんなトラックを避けるように小走りして岸壁に出た。

 間近から見上げるフェリーは、
長年の活躍のせいか、だいぶ疲れて見えた。
あちこちが錆付いていた。
不意にまた1隻が静かに岸壁を離れた。
賑やかなアナウンスやドラの音・・・
そんな僕のイメージは違っていた。
ただ毎日繰り返される決まった作業のように見えた。
鏡のような水面を滑るように走っていった。
 
 苫小牧港は室蘭港と並んで特定重要港に指定されている。
北海道ではこの2つの港だけのことだ。
日本で最初の掘り込み港であるらしい。
対岸に並んだ石油コンビナートの小さな灯りが
波の無い海面に映り揺れて見えた。

 しばらくすると沖から近づく船灯が見えた。
はっきり船体が見えたとき、180°旋回した。
時計を見るとPM22:00ちょっと前・・・
娘が乗っているフェリーだ。
八戸発〜苫小牧着PM22:00便・・・
バックで見事に着岸した。
僕のへなちょこ操縦とは訳が違った。
連絡通路へ向かった。

 出発前に買ったばかりのタイヤ付バッグを
嬉しそうに引きながら、娘が連絡通路から出てきた。
ばあちゃんとの小旅行・・・
楽しかったであろうことは顔を見てすぐにわかった。
彼女がヨチヨチ歩きの頃、一度フェリーに載せたことがあった。
だけど記憶にあるはずもないと思う。
今度はきっといい思い出になるにはずだ。

(つづく)

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