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作者紹介
渡辺 俊博
道中作文画家
デザインスタジオ・ズウ代表

昭和23年北海道夕張市生まれ。
印刷会社、広告代理店勤務のち昭和54年デザインスタジオ・ズウ設立フリーとなる。
「北海道各駅停車見て歩き食べある記」「北海道おいしいもの見つけ旅」(北海道新聞社)、豆本シリーズ「小樽散歩」「函館散歩」「夕張散歩」(自費出版)などの著書があるほか、旅のスケッチ展を数回開催。
現在、JR北海道社内PR誌「ズウさんの俳諧旅日記」コーナーを執筆中。
古い町を旅するのが好き。ほのぼのとした人情を感じさせるイラストが人気で、最近は旅の絵手紙と俳句に凝っている。

「絵手紙ズウさんの痛快・駅前探見」
著者 渡辺俊博
発行 北海道新聞社
定価 1400円(税別)

第14話:

〜生活工房サッポロファクトリー〜

 「カンパーイ!」グビッグビッ…。宴会の皮切りはたいていビールからだ。
 そのビールが、初めて日本人の手で本格的に造られた工場が札幌にあった。いまのサッポロビールの前身、明治9年にできた。<開拓使麦酒醸造所>がそれである。
 その工場跡地が<生活工房サッポロファクトリー>として変身。ショップやレストラン、ホテル、温泉などが集まったひとつの街になった。
 そのビール工場のシンボル、高い煙突を目指して探検に出かけた。迷路のように店が詰まっているというので、迷いながら楽しめそうだ。

 まず着いたのが『マックロ節』にも歌われた黒い煙突がドーンとそびえる<煙突広場>。高さ40メートルもあるこの煙突は昔、汽車で札幌へ来る乗客の目印でもあったらしい。
 その横に大小3つの<レンガ館>がある。100年以上も時を見つめていた古いれんが壁に触れてみると、なぜかいとおしい感じになってくる。
 星をつくる工場をテーマにした<星造工房>へ行った。宇宙への想いをこめたアンティックな機械やおもしろい実験道具のコレクションがいっぱい。秘密の扉を入っていくと、暗い部屋の中に不思議な映像や光が交差し奇想天外な機械が動いている。幻想的な雰囲気がすごい!
 まるでヴェルヌやウェルズのSF小説の世界だ。どの機械もスイッチ類をいぢることができるのでうれしくなった。いつのまにか迷?物理学者気分に…。(残念ながら今は星造工房はなくなり、新しく<ミニワールドミュージアム>が出来た。ここではミニチュア模型で再現した世界各国の名所を、ガリバー気分で楽しむことができるヨ。)

 さて次は、日本最大級を誇るガラス屋根に覆われた<アトリウム公園>に行ってみた。
 「おおっ」と言ったきり一瞬コトバに詰まった。目の前にドヒャーッと広がるのは高さ40メートルもの巨大な温室だ。雨や風、雪もなんのその、1年中、天候に左右されないで快適に遊ぶことができる。両側にオペラ座の桟敷席のようにレストランが並び、眼下には水が流れ、池や芝生、樹木、テラスがある。3階から眺めていると羽根をつけてフワフワ飛んでみたい気分になってくる。
 月の池、星の井戸、動く石などおもしろい仕掛けもある。コーヒーを飲みながら円いガラスの天井を見上げていると、まさしく春。光はまぶしいし、これでそよ風が吹いて小鳥のさえずりが聞こえたら申し分ない。

 昔、ビール工場の貯酒蔵だったトンネルを利用したレストラン<ビヤケラーサッポロ>で昼食をとった。
 壁も天井もすべて赤れんがでなので、独特の雰囲気を出している。動産牛のステーキと飲みごろに冷やされたビールがとてもうまかった。

 ファクトリー探索で忘れてはいけないものに<サルベージアート>がある。古い工場にあった機械や部品が国内外の作家の手によりモニュメントになっている。ファクトリー内の壁やドア、階段、床などいたるところにあるんですゾ。
 なんといっても一番の楽しみは、二条北館にあるサッポロ麦酒工場温泉<サッポロスプリングス>だ。  ビールの温泉ではないが、さっそく水着に着替えて温泉に入った。古代遺跡を思わせる雰囲気で、大きなプールを中心にカゲユとかアチチ、半月など変わった浴槽がいくつもある。
 露天風呂も変わっていて、まるでカマクラ風のカマクラミッド。何となくカップルには喜ばれそうだ。
 ぼくは雪見洞窟という浴槽に入り、ゆっくり浸かりながら空を見上げた。気分はすっかりリラックス。
 まさにスプリング・ハズ・カムである。
(続)


絵と文 「北海道各駅停車 見て歩き食べある記」(北海道新聞社)より



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